「グローバル化」の落とし穴
給与水準をグローバル視点で見直していますか?
グローバル化と言われて久しいですが、その波はもちろん新潟の採用事情にも大きな影響を及ぼしています。今回は「転職市場のグローバル化」において意外と知られていない盲点についてお話をしていきます。
今の転職市場
アベノミクスの後押しにより円安株高、賃金ベースアップの報道が目立ちますが、消費税増税に伴い、俯瞰してみれば実質賃金はマイナスというケースが少なくないのがどうやら現実のようです。
一方で転職市場は売り手市場です。企業が事業の成長と収益の拡大を目指そうとすれば優秀な人材を獲得することが最優先課題となります。
新規事業立ち上げ経験者、チーフマーケティングオフィサーなど経営ボードに密に携わる職種/製造業界における海外系行経験者/建築業界、メディカル業界における専門職など、いわゆるプロフェッショナルと呼ばれる人材のニーズが現在高まっていますが、同時にこうしたトッププロの獲得戦は熾烈を極めています。
事業の経営に大きなイノベーションをもたらしてくれる可能性を秘めた人材はどこの企業も欲しいわけですから、当然彼らは複数の企業からオファーをもらうわけです。こうした引く手あまたの状況は翻って、採用する側は彼らにとって「転職してよかった」と思える条件を提示しない限り、他社に優秀な人材を譲り渡すことにほかなりません。
ところが、人事担当者の多くは自社内の人事制度や賃金テーブルを見直すには至っていないのです。いまなお従来の年次や年齢、同職種の同じ立場の賃金がベースになっています。
「グローバル化」が不可逆的な時代の趨勢の中で、地方企業が意識すべきはもはや東京の給与水準ではありません。完全報酬型の高い給与水準を提示する外資系企業が競争相手です。グローバル化とは単に社内の公用語を英語にするという問題ではなく、優秀な人材を獲得したいなら外資系と比肩しうる、「いまより高い」条件提示が不可欠です。極めて日本的な言い方をすれば「それなりの誠意」を表示しなければ、優秀な人材は獲得できない。ぜひ一度、こうした現実に目を向けていただきたいのです。
転職の成功例
「転職したい」と思わせる具体的な条件とは、魅力的な機会/挑戦できるステージ/報酬にほかなりません。こうした状況を冷静に見極め、「求める人材」を獲得した成功例をご紹介します。
某社では海外進出に伴い、海外拠点への物流とネット上のe コマース構築が急務でした。単にウェブ構築できるだけでなく、事業戦略を立て、それに基づいた営業戦略として現場に落とし込める、プロマネ的なマーケッターを必要としていました。事業としての仕組みづくりから分析→実践までできる人、という希望を叶える人材。当然、こんな優秀な人材はどこの企業でも欲しいわけですから長年採用に難航していました。
そんなある日、この希望にかなう「まさにこの人!」という人物が現れたのです。満場一致でぜひオファーを、という段階になって人事担当者がこう言いました。
「とはいえ、その人だけ優遇するわけにいかないんですよ」
採用したい人材の給与テーブルが同社の同職種の賃金テーブルの水準よりはるかに高額だったからです。しかし、その人の可能性を真に見い出し、正当に評価するなら、その気持ちを「形」として提示することが重要だと気づいた経営者が「ならば、お迎えするに相応しい新しいポジションをつくればいい」と判断。鶴の一声で採用は成功しました。この英断により某社は海外展開著しい事業拡大を遂げています。
この反対のケースは従来の制度の見直しに踏み切れず、逡巡している最中に別会社が好条件を提示し、獲得に至れないという例。一時金としての上乗せを検討中に他社が年次のベースアップという条件提示で引き抜いたのですが、こうした例は枚挙に暇がありません。
転職市場の変化
さらに特筆すべきはグローバル化がもたらした、もうひとつの変化です。
大手製造業者が年功要素を廃止し、プロフェッショナル契約に代表される職務給、役職等級制度の一本化に大きく舵を切ったことが話題になりましたが、これは事業のグローバル化に対応するためです。この流れに伴い、転職するなら35歳位までが限界という若手至上主義は過去のものになりつつあるということです。
実際、40~50歳位までのプロフェッショナル求人が堅調に伸びています。ことUターンに関しては地方銀行、信用金庫の欲しい人物像としてミドル求人ニーズが高まっています。とりわけ融資管理、新商品開発、制度設計のご経験をお持ちの方でこれまでの経験と知見を活かし、地元に貢献したいと漠然とお考えの方にはチャンスといえます。製造業界では海外進出に伴い、40歳以上の海外営業経験者を求める声が高まっています。
グローバル化の波は、ひたひたとローカルルールをも変えようとしているというわけです。経営者および人事採用ご担当者におかれましてはこうした市場の潮目を判断し、相対的な判断軸(つまりグローバル視点ですが)を持つことが不可欠です。とはいえ、言うは易く、行うは難し、も真なりです。
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