先回、Iターン希望者が増えていると書きました。今回はそのきっかけについて最近感じていることを書いてみたいと思います。
Iターン希望者で新潟で働きたいという方が増えている
地方創生は喫緊の課題と言われながら、こと新潟においては「これは!」という成功事例やインバウンドの商機を上手に活用した話もなかなか聞かれない。私は過去に、そのことをこのブログで何度か嘆いてきました。
ところがここ最近、新潟出身ではないにもかかわらず、新潟に興味を持ち、新潟で働きたいという方が増えていることを実感する機会が増えているのです。
その背景をたずねると、各地で行われているイベントがきっかけという方が少なくありません。
村上トライアスロン、フジロック、長岡花火大会、アートセレブレーションをはじめとする継続的な大型イベントの定着がことのほか大きな影響力を持っていることに驚かされます。毎年、動員数も増え、認知度もあがり、リピーターも毎年増えているようです。
すでに観光地として定着していた佐渡も近年は海外からのお客様のほうが多いと聞きます。
また玄人好みの「新潟発見」なかなか興味深いものがあります。村上春樹さんの装丁画で有名な故安西水丸さんの著書『ちいさな城下町』には村上市が登場します。マラソンに参加する村上さんに連れだって新潟を訪れた安西さんが「春樹さんと苗字が同じよしみで」という理由でふらりと降り立った村上市に魅了されてしまうくだりがなんとも微笑ましいのですが、それがご縁で〆張鶴を愛飲されるようになり、やがては年に一度発売される〆張鶴梅酒のデザインも手がけられたそうです。
素晴らしい変化の兆し
みなさんは「村上市には3つの『さけ』がある」という言葉を聞いたことがありませんか。「酒」、と「鮭」はいわずもがな。最後のひとつは「情け(なさけ)」だといわれています。
この情けの現れ方は、お世辞にもホスピタリティーに溢れるわかりやすいものとは違い、むしろ武骨でそっけないくらいだと私は常々感じています。
満面の笑顔で「ようこそ」という華やかさはありませんが、寒い日には熱いお茶が、暑い日には冷たいお茶が素朴な菓子といっしょに無言でさしだされるような、さりげない情けのように思います。そんなさりげなさが安西さんを魅了したのかもしれません。
また「潮風とカモメに会える」が売りの笹川流れも人気です。私も毎年夏休みに子どもと一緒にこの笹川流れを楽しみにしています。澄み切った青い空と碧い海。そして海の向こうに浮か粟島のコントラストが実に美しい場所です。日本海の荒波で浸食された奇岩も趣深く、おすすめのスポットです。
イベント目的で現地を訪れ、観光するうちに新潟を好きになる。好きになるだけでなく、さらにそこで暮らしてみよう、働いてみようという動機につながるということ。
ここに、大きなポテンシャルを感ぜずにいられません。その上、転職相談という行動にうつしてくださっている。素晴らしい変化の兆しです。
受け入れる側の企業もまた意識改革を求められている
ところが残念なことに先回のべたように、都市部の給与水準と地方の給与水準のギャップがネックとなり、最後の最後で「新潟で働く」という選択を諦めてしまうのです。
毎年1万人ずつ人口が減少しているといわれている新潟県にとって、町おこしの活動を結実させるためにも、あとひとふんばり、何とかしたいところです。
求職者の意識変化を求めるだけでなく、せっかく「新潟を発見し」移住まで考えはじめる働き手をもっと優遇する制度ができないものか。受け入れる側の企業もまた意識改革を求められていることは間違いないようです。
コメント