経済の活性化には女性の活躍が不可欠
先日、社会学者であり京都大学大学院人間・環境学研究科准教授でもある柴田悠さんの講演に行ってきました。この日は「どうしたら経済が活性化するのか」という問題についてお話をされました。『子育て支援が日本を救う』というご著書にもあるように、ざっくりと結論を申し上げますと経済の活性化には女性の活躍が不可欠であり、女性が働きやすい環境をつくること、ひいては待機児童問題を解決すれば、この国のGDPは上昇するというものでした。
「待機児童は都市部だけの問題だ」という声も聞かれますが柴田先生によれば「地方から出てきた若い女性の能力を、国の税収に反映できていないという意味においては地方の犠牲が税収に反映されず、地方に還元されていないとのこと。それは地方にとっても「取られ損」となっていて、損失なのだと。よって日本全体にとって、待機児童問題は大きな損失という結論付けでした。
確かに地元新潟のことを振り返ってみれば、預ける場所が少ないせいで女性が仕事をセーブするしかないケースは少なくありません。
生涯年収が減少することが予測され、旦那の稼ぎだけでは食べていけない世帯も少なくないいま、共働きはデフォルトになりつつあります。かつて福井県は共働き率全国ナンバーワン、共働き世帯における貯蓄率ナンバーワンを長らく誇っていました。ところがその福井県でさえ、少子高齢化の影響でこの神話が崩れつつあるのだといいます。
実際、先に挙げた共働きを可能にしていたのは二世帯が同居することで実父母や義父母が子どもの面倒を引き受け、若い夫婦が共働きをするというインフラが成り立っていたおかげだというのです。
いまの若い夫婦は同居を嫌うため、子どもを預ける場所を持てず、その結果、妻のほうが仕事をセーブしなければならないという事態に陥っているとのこと。同居を嫌がるのはなにも若夫婦だけではなく、高齢出産が増えたいま、孫をあやす親世代も高齢化しているため、体力的に面倒見きれないというリアルな現実もあるようです。
保育は公共事業よりも投資効果大
女性の高学歴化が進めば、進学率があがり、それにともない地方から都心部への人口流出が増えることは自明の理です。女性が住み着かない都市は過疎化してしまう。経済活性化の鍵はやはり女性であり、つきつめれば、彼女たちが働きやすく、生きやすく、産みやすく、育てやすい環境の整備がなによりも優先すべき事項であることが浮き彫りになるというわけです。
またこの日聞いた「保育は公共事業よりも投資効果大」であるというフレーズには膝を打つ思いでした。新潟はこれまで土木建設の公共事業で栄えてきた歴史がありますが、人口減少が避けられない今こそ、道路や橋の増築よりも保育園に予算を注入するほうが未来への投資になるという観点は私も大賛成です。
さらに一度都市部へ流出した働き盛りの人々をどうしたら生まれ故郷へとUターンさせることができるかという話の展開となり、これが大変面白く、いろいろと考えさせられるものでした。
就職時に都心部へ出ていく人のほとんどが進学組です。一方で地元に残る人々のほとんどが親の事業を継ぐか、ブルーカラーに従事しています。地元貢献の名のもと、都心部に流出した人材に帰郷を促しても「仕事がない」という現実に直面してしまい、ますますよりつかなくなってしまうという悪循環が起きています。
生産人口となる若手を地方都市に呼び戻すための魅力やメリットが不可欠
事情があって地元での転職を考えた方が弊社の転職相談におみえになった際。よく言うのは「どうか、都落ち感のない仕事を探してください」という台詞です。Uターン転職に未だ都落ちのイメージを引きずる人が多いのはなんとも残念です。
生産人口となる若手を地方都市に呼び戻すためには呼び戻せるだけの魅力やメリットが不可欠とのこと。とはいえ、こうした魅力的な手立てが見つからない場合どうするか?
その場合、他県の人の流入を増やすという選択肢があることを教わりました。
かつて秋田の大潟村が過疎化せずに農業の地として栄え続けられた秘訣は他県を受け入れたことが大きかったと言います。他県からの新参者を受け入れることで人口を増やし、農業が代々引き継がれていったのだそうです。
この大潟村のエピソードは「おらが村」とばかりに他者を排除するような村社会は衰退の一途をたどる可能性を示唆しています。このような危機感を持ちつつも、ではどうすれば魅力的にアピールできるかという視点で流入モデルを考え、目指すべきではないか。そんなことを気づかせてくれた講演でした。
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